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喫茶ぺぷちん
〜旅する金魚〜


たびびとしらず #04
島好き在さんの旅の記憶 第四回『春一番の島』 仕事を終えた足でそのまま空港へ向かう。定時でダッシュすれば、最終の福岡行きに搭乗できる。このフライトには何度かお世話になっていて、前日に福岡に着いておけるおかげで、翌日10時発のフェリーに乗るのがとても楽だ。 以前、対馬を訪れたとき、公園から起伏のない丸い島が見えた。それが今回の目的地・壱岐島だった。長崎県は日本で最も離島が多く、飛行機では行けない二次離島・三次離島がわんさかある。その中で壱岐島は小さいながらも長崎―壱岐間の航空路がある一次離島。ただ、飛行機の時間が合わなかったため、今回は福岡からフェリーで壱岐入りし、帰りは飛行機で長崎空港経由という行程を選んだ。 天皇誕生日の祝日に合わせて組んだ今回の島旅。到着した壱岐島は“春一番の島”だった。本州では3月初旬ごろによく天気予報で「明日は春一番が予想されています」と耳にするが、その語源はここ壱岐だという。外海に面して風が強く、季節の変わり目の南風で昔は多くの漁民が命を落としたらしい。今やすっかり定着した言葉のルーツが壱岐にあるというのは初めて知った。

西舘 在
1月19日読了時間: 3分


たびびとしらず #02
島好き在さんの旅の記憶 第二回「メリークリスマス」 風がビュービューと吹きつけ、肌を刺すような冷たさに私はコートの前をぎゅっと抱え込む。 「こんなはずじゃなかったのに…」 という言葉が、さっきからずっと頭の中を占領している。 風に乗って、遠くからクリスマスソングが聞こえてくる。 クリスマスを那覇で過ごすのは初めてだった。というより、12月の沖縄自体が初めてだった。 さすがに半袖で過ごせるとは思っていなかったが、「やっぱり本州よりは暖かいねぇ」と言えるくらいの気候を期待していた。 それなのに、国際通りへ向かって歩く私の口から出た言葉は「寒ぅ…」の一言に尽きた。 海から吹く風がビルの谷間を抜けて、鋭く私に向かってくる。 地元の人たちも「今年の寒さは異常だよ」と言っていた。 日が沈み、あたりが暗くなると、冷え込みは一層厳しく感じられた。 それでも、暗い通りから明るい国際通りに出ると、お土産屋や飲食店から流れるクリスマスソング、三線の音、FMラジオのチャンプルーが、丸めていた体から少しだけ力を抜いてくれた。 シーサーやちんすこう、Tシャツなどを横目に歩い

西舘 在
2025年11月11日読了時間: 4分


たびびとしらず #01
島好き在さんの旅の記憶 第一回「島は逃げない、私が帰れないだけ」 記念すべき第一回目。さて、何を書こうか――そんなことを考えているうちに、ふと過去に訪れた旅先が脳裏に浮かび、しばしトランス状態に。 「島好き」と紹介されたのだから、やはり最初のエッセイは島がふさわしいだろう。 実際、真っ先に思い浮かんだのも島だった。 その島とは、ベタだけれど沖縄。ベタだけど本島。 今から20年ほど前。ANAが「全国どこでも1万円」という破格のフライト企画を実施したことがあった。全路線片道1万円という、まさに“神企画”だった。 当時の勤務先はわりとゆるく、平日だった受付開始時刻に、電話を鬼のようにかけまくった。もちろん、そう簡単には繋がらない。何十回目かのチャレンジでようやく繋がったとき、電話口の方にぶつけたのは「伊丹を金曜出発、日曜戻りで空いている路線はありますか?」という、行き先無視のドンブリ質問。 そう、どこでもよかった。ただ、とにかく旅がしたかったのだ。 たしか予約したのは5月でフライトは7月。北海道方面はすでに満席だったが、運よく「金曜昼前に伊丹出発、日曜

西舘 在
2025年8月14日読了時間: 4分
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