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たびびとしらず #04

執筆者の写真: 西館 在
西館 在
1月19日
読了時間: 4分

更新日:4月17日

島好き在さんの旅の記憶



第四回『春一番の島』


仕事を終えた足でそのまま空港へ向かう。定時でダッシュすれば、最終の福岡行きに搭乗できる。このフライトには何度かお世話になっていて、前日に福岡に着いておけるおかげで、翌日10時発のフェリーに乗るのがとても楽だ。


以前、対馬を訪れたとき、公園から起伏のない丸い島が見えた。それが今回の目的地・壱岐島だった。長崎県は日本で最も離島が多く、飛行機では行けない二次離島・三次離島がわんさかある。その中で壱岐島は小さいながらも長崎―壱岐間の航空路がある一次離島。ただ、飛行機の時間が合わなかったため、今回は福岡からフェリーで壱岐入りし、帰りは飛行機で長崎空港経由という行程を選んだ。


天皇誕生日の祝日に合わせて組んだ今回の島旅。到着した壱岐島は“春一番の島”だった。本州では3月初旬ごろによく天気予報で「明日は春一番が予想されています」と耳にするが、その語源はここ壱岐だという。外海に面して風が強く、季節の変わり目の南風で昔は多くの漁民が命を落としたらしい。今やすっかり定着した言葉のルーツが壱岐にあるというのは初めて知った。

同じ長崎でも五島列島は教会が多く、隠れキリシタンの歴史が色濃いが、壱岐ではキリシタンの気配は全くと言ってよいほどない。フェリーが博多港から出ていることからも分かるように、地理的には福岡の方が圧倒的に近く、韓国もすぐそこ。まさに「国境の島」という雰囲気がある。無人島ながら自衛隊の訓練島が近くにあり、ハコモノとしては復元された古代船を展示する一支国博物館がある。神社や古墳も点在し、この島が大陸に目を向けていたことがよく分かる。というより大陸から日本へ文化が入ってきた入口としての島。


島なので魚が美味しいのはもちろん、年間900頭しか出荷されない幻の和牛・壱岐牛もある。さらに特産の柚子を使ったジャムや柚子胡椒も豊富で、肉・魚・農産物すべてが揃ったオールマイティな島だ。到着した日の昼に食べた壱岐牛のハンバーグは本当に美味しかったし、宿で「本日の焼き物です」と出された鰆のお頭の大きさには思わず声が出た。

壱岐牛のハンバーグ
壱岐牛のハンバーグ


鰆のお頭
鰆のお頭

島の周囲には、原島・大島・長島・辰ノ島といった二次・三次離島があり、島好きにはたまらない。ただ、海が美しいこれらの島を訪れるのは、さすがに2月ではない。実際、辰ノ島は海水浴のため夏季限定で船が就航する無人島である。


「壱岐対馬」とセットで覚えている人も多いだろう。博多港を出る船も壱岐は寄港地で、最終目的地は対馬だ。私が初めて壱岐島を目にしたのも対馬の公園からだった。対馬は壱岐よりはるかに大きく、そして何より大陸により近い。韓国―対馬間には船の往来があるが、壱岐には韓国船の就航はない。そのため少し地味な印象があるかもしれないが、実際に訪れてみると温泉もあり、過度に観光化されていない穏やかな空気が心地よい。インバウンドで日本中が外国人であふれる中、こうした長閑な土地にほっとする。


今回は壱岐で2泊したが、これがちょうどよい滞在日数だった。欲を言えば、先述の原島・大島・長島にも行くには時間が足りなかったが、壱岐島を巡るだけなら2泊が最適。1泊では慌ただしく、3泊では主要な観光ポイントを回り切ってしまい時間を持て余す。実際、3日目の午後は温泉でのんびり湯に浸かり、帰りの飛行機の時間を調整した。


観光であちこち動き回ったり、食べ歩きを楽しんだりするのも良いし、命の洗濯の「何もしないをしに行く旅」もまた贅沢だが、詰め込みすぎない、ほどよく綺麗な海を見て満開の桃を見てというのんびりした観光ができて、しかも食べ物にハズレがない(旅ではここが私の最重要ポイント)壱岐島。とてもおすすめの島。


春一番の塔
春一番の塔

西館 在 (にしだて ある)

旅とオールドミニクーパをこよなく愛するフーテン。気に入ったものを長く使い続けるのが好きで愛車は現在26年目。家で寛ぐことが好きなのに家にいるのはほぼ睡眠時間という矛盾を抱えて生きています。

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