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ピラティスとピラティス以外と私 #03

執筆者の写真: Akemi
Akemi
2025年11月21日
読了時間: 3分

更新日:2025年11月24日

第3回『黒いコートのサンタ』


11月に入り、街の空気がどこか甘くて冷たい“クリスマス前の匂い”になると、必ず思い出す出来事がある。

あれは大学生の頃。

クリスチャンではないけれどクリスマスの雰囲気が好きで、友達に手作りカードを渡したり、家族にプレゼントを買ったりしていた。


冬休みに入り、家族へのプレゼントを抱えて実家に帰る日。

少し寝坊してしまい、私は空港へ急いだ。

当時はスカイメイトという、「当日空席があれば割引で乗れる」学生にはありがたいサービスを使っていたため、とりあえずカウンターに並ぶしかなかった。

列がじわじわ進んで「あと少し!」と思ったそのとき、前にいた黒いコートの男性が、何気なくスタッフに言った。


「彼女を先に」


焦っているのが丸見えだったのだろう。

私は恐縮しながらも、ありがたく順番を譲っていただいた。

無事に手続きを終え、次は荷物検査へ。そこでまた長蛇の列。


「やばい、今度こそ間に合わないかも…」と半ば諦めかけていた時、グランドスタッフの方が声を上げた。


「〇〇便ご搭乗のお客様はいらっしゃいますか?」


私はすぐに手を挙げ、別レーンへ案内される。すると、そこには先ほどの男性の姿が。


「あ、同じ便だったんだ…!」


自分の焦りっぷりが恥ずかしくなると同時に、彼の優しさが沁みた。

そしてここから、その日の最大のトラブルが始まる。


荷物検査場で突然――


ピーーーッ。


聞いたことのない大きな音が鳴り響いた。

異常が検知されたのは、家族へのクリスマスプレゼントを入れた袋。

係の方に言われるまま、袋の中の物を一つずつ取り出していった。

ある箱を指差され、「こちらの中身は?」と聞かれる。


「ジッポライターとオイルです。」


タバコ好きの父のために選んだ、とっておきのプレゼント。

私が答えた瞬間、係の方が淡々と言い放つ。


「こちらは機内持ち込みも、お預けもできません。破棄されるか、置いていかれるかになります。」


……はい?

捨てる?

置いていく?

クリスマスプレゼントなのに?


私は一気にパニックに。

ここまでの私の焦りを見ていたグランドスタッフの方も、検査係の方も全員がちょっと気まずい空気になった。

どうしようもなく焦る私を見かねたように、またもやあの男性が声をかけてきた。


「あの、よろしければ…私は明日こちらに戻るので、受け取ってあなたに送りますよ。」


その場の全員が「……神…?」と思ったに違いない。

男性はラッピングを見てプレゼントだと気づいていたのだろう。

そして、私にとってどれほど大切なものかも。

私は深々と頭を下げ、お願いすることにした。


無事に飛行機へ乗り込み、機内で住所を書いた紙を準備する。

到着すると、男性は入口で待っていてくれた。

名刺を渡され、「明日送りますから、安心してください」と静かに言い残して去っていく黒いコートの背中は、もう映画のワンシーン。

名刺には「〇〇商事代表取締役」の文字。

黒いコートのサンタ(代表取締役)
黒いコートのサンタ(代表取締役)

帰宅して母に興奮気味に話しながら名刺を渡した。

「代表取締役って偉い人なんかなあ。」と私の言葉に呆れる母。

今思うと自分でも驚くほど世間知らず。

母はすぐにお礼の電話と心ばかりの品を送ったようだった。

(それくらい自分でしろと言ってやりたい。)


あんな素敵な人が社長してる会社、絶対いい会社やん。


2日後、荷物は無事に到着。

父の喜ぶ顔を見て、あの男性の優しさが胸に広がった。

私にとって、あの日の黒いコートの男性はサンタクロースだった。

今でも忘れられない、温かいクリスマスの思い出だ。


大人になった今、あの日の出来事の意味がより沁みる。

いつか違う形でも、あのときいただいた優しさを誰かに返していきたい。


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